10/6~7と第55回魚類自然史研究会が開催されました。
魚類自然史研究会は、中池見に魚の調査に来てくださっている、
近畿大学農学部環境管理学科水圏生態学研究室が事務局となって、
水辺の生き物に関する研究発表や保全に向けての活動報告など、
プロアマ問わず、情報をやりとりする場として続けられています。
第55回の今回は、1日目を敦賀市男女共同参画センターで、
2日目を中池見人と自然のふれあいの里にて、様々な報告がありました。
初日の報告は、ど素人の私にはちょっと難しく、
ただ、外来種であるブラックバスの駆除の取り組みや、
ミシシッピアカミミガメを、ただ駆除するではなく、
せめて食べてあげようという趣旨の報告は、
一部衝撃的な画像もありましたが(笑)、
とても共感でき、また興味深く聞かせていただきました。
そして、2日目は、中池見ミニシンポということで、
中池見で行われている調査を中心に報告がありました。
中池見ねっと理事の増田(左)より、
中池見湿地の概要と、
中池見ねっとが取り組んできたアメリカザリガニ防除について報告があり、
その後は、近畿大学院生の北川哲郎さん(右)から、
「中池見湿地に見られる魚類」と題して、
中池見の水環境の概要、生息が確認されている魚類について報告されました。
報告の中で、現在新幹線のルートが予定されている後谷について、
中池見に生息する魚類にとって欠かせない場所であることと合わせて、
大きな危機感が語られました。
続いて、同じく近畿大学院生の朝井俊亘さんから、
「中池見湿地とメダカ」と題して、報告がありました。
すでに会報14号でもご紹介していますが、
日本固有の魚であるメダカが、
近年の研究によって、南日本集団と北日本集団の2種類に分けられることがわかり、
これまで「メダカ」とされていたものは、
そのうちの南日本集団のメダカであることがわかりました。
そこで、北日本集団を新たに別種として、つまり新種として記載登録されることとなり、
そのいわば、見本メダカがいる場所(模式産地というそうです)として、
中池見が選ばれました。
朝井さんからは、この経緯についての報告と、
模式産地である中池見にとって必要な保護対策については、
外来魚はもちろん、
交雑の恐れのあるヒメダカや他地域からのメダカの人為的な移入のない様に、
中池見だけでなく、敦賀市としての啓蒙啓発等の取り組みの必要性を語られました。
最後に、近畿大学の細谷和海教授より、
「保全単位としての超個体群」と題して、
普段は隔離された地域集団としての「局所個体群」と
いくつかの局所個体群から構成される「下位個体群」、
さらにいくつかの下位個体群から構成される「超個体群」という階層性があり、
「超個体群」を保全の単位と考えるべきであろうということが述べられました。
生物の多様性を言うときに、
遺伝的固有性を大切にしないといけないと言われていますが、
一方で遺伝的多様性も重要です。
遺伝的固有性は局所個体群に対応し、
遺伝的多様性は超個体群の中で確保されるというのです。
そして淡水魚の場合、水系を基本として考えられますが、
保全しようとする種がどのような生活史か、
移動範囲や生息環境などがどのようであるかによって、
どの範囲を超個体群とするかは、
より科学的な評価が必要とのことでした。
さて、お昼を食べて午後からは、エクスカーションを行いました。
いつも行うエクスカーションと、ほぼ同じようにご案内しているのですが、
さすが魚族の皆さん、食いつく場所が違います(笑)
水辺にくると、盛り上がる盛り上がる(笑)
蛇谷まで行きましたが、あの癒しの景色にも反応はわりかし薄く(笑)
とっとと後谷へ。
水辺に入って、貝を熱心に探す人、
石をひっくり返して、ちっちゃな生き物を探す人などなど・・・
ちなみに、↑は、水路で見つけた貝を、10円玉と並べて撮影中。
もちろん、貝にはすぐに水路にお帰りいただきました。
ふだんなら、足元も悪いのでご案内しない山際の水路ですが、
皆さんには、興味が尽きなかったようでした。
この研究会に参加しても、
結局私の魚オンチは変わらないような気がしますが(苦笑)、
ただ、水の様子の変化は、目に見えにくく、
そのバロメーターとなる魚のモニタリングは、
今後も欠かせない大切なものだと思いました。
そして魚だけを追いかけるでない、
その周りの環境にもどんどん目が行く皆さんの様子には、
とても共感できましたし、とても楽しかったです。
どうぞ、また、ゆっくりとお越しいただき、
皆さんの目で、中池見の魚の様子を見ていただければと思います。
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