今日は、中池見にとっては、待望のお客様が視察に来られました。
ラムサール条約事務局長のクリストファー・ブリッグス氏と、
アジア・オセアニア担当官リュー・ヤン氏のお二人です。
前日、兵庫県豊岡市の「円山川下流域・周辺水田」を視察し、
夕方には敦賀市長を表敬訪問されての、今日の中池見です。
遠方からのお客様に、WELCOME!な、お天気。
こもれびの道を上がりながら、
途中に咲く、トキワイカリソウやシュンランを熱心に撮影されるなど、
いかにも植物に関心が高いブリッグスさんです。
わくわく山にさっさと登って、中池見の全景を眺めて撮影。
予定の時間を過ぎてますが・・・(笑)
センターにて、中池見の概要説明を行い、
センターの後ろの深山からの大量の浸み出し水をご覧いただいてから、
フィールドへ。
ちなみに、ご用意した長靴が履けるかどうかで、随分気をもみましたが、
ちゃんと履けて、思わず拍手でした(笑)
常連のアオサギくんも、WELCOME!?
出てきたばかりのデンジソウやミズトラノオの芽をご覧いただき、
敦賀の古民家で、湿田独特の農具、田下駄や田舟をご紹介しました。
そして、堀切江沿いに歩いて、笹鼻上流の池へ。
ブリックスさんにとっては、休耕田の様子などが、
これまで見てこられた「湿地」に比べると、
ずいぶんドライと感じられたようで、
なぜ水路があるのか、なぜ排水しているのか、と、
質問されました。
田んぼとしては、当たり前の光景なのですが、
そもそも、なぜ湿地なのに田んぼにするのか、
田んぼにするということは、
米を育てるために肥料を使ったりする(有機肥料であっても)、
それは湿地にとっては良くないことなのではないかという・・・。
私たちは、最初から田んぼだった中池見を知っていますから、
田んぼにするのは当たり前的に思っていましたが、
西洋からみると、湿地には人の手が入らない(尾瀬のように)、
というのが当たり前なのかもしれませんね。
笹鼻江上流の池まできて、たっぷりの水があるのを見て、
ちょっとホッとされたような(笑)
しかし、この池の成り立ちをお伝えし、
この池がここにあること自体、
それでいいのかどうかという議論もある、というお話をしました。
さらに、排水することをやめてしまえば、全体がこの池のようになるでしょうが、
それでは水環境の多様性はなくなり、
それと同時に生物の多様性も失われるのではないかと考えますと、お伝えすると、
確かにそうだろうと、水環境の多様性は重要だと、ご理解いただけたようでした。
三つ又の水路では、江戸時代に作られた3つの水路の合流地点であること、
中池見の排水は、ここしかないので、必要があれば水をせき止めることはできるが、
どのように保全していくのか、ということは、
これから始まる保全活用策定委員会の中で、合意形成をはかりながら、
決められていく予定であることをお伝えしました。
ブリックスさんからも、
どのように保全していくかしっかりプランを立て管理していくことは、
簡単ではないだろうけれど、やるべきだとのお話。
いや、おっしゃる通りです。
ちょっと時間が心配でしたが、蛇谷まで行きました。
復田した場所、水口辺りには、大量のオタマが。
しかし、そこには残念ながら、大人のザリガニもいて、が~~ん!
実は、途中途中で、ザリガニの被害についても触れていて、
このように水がたっぷりたまったところには、
ザリガニが集まってくるというお話には、
おかげで(苦笑)信憑性がでて、ご理解いただけたのではないかと思います。
ブリックスさん、捕まえようとしてくださいましたが、
残念ながら逃げられてしまいました・・・。
蛇谷から引き返し、問題の後谷へ。
途中、江尻で、WELCOME!の横幕を張って準備しておられた、
ウェットランド中池見の皆さんに、ご案内をバトンタッチ。
日本自然保護協会や環境省の担当者といっしょに、
新幹線のルートのこと、
この後谷の重要性など、丁寧に説明されていました。
その後、プレスのインタビューが始まりました。
その中で、ブリックスさんは、
中池見は本当に生き物豊かな素晴らしい場所だ、
こうしていても、鳥のさえずりやカエルの鳴き声が聞こえ、
とても静かで素晴らしい自然。
この場所をこのまま保全していくために、
どうすることがベストの選択か、まだまだ議論の余地があるのではないか。
何より、この場所は、日本に守る責任がある国際的に重要な湿地なのだから、
と述べられました。
また、ワイズユースの解釈について、
インフラ整備のようなものについても、
ワイズユースと考えるのか?との質問については、
日本は十分に整備された国であり、
開発というよりは、自然が守られるのが望ましいのではないかと。
そして、最後に、少なくともこの美しい谷を壊さないように、
後谷を避けたルートに変更してほしいと締めくくられました。
今日の後谷。
相変わらず、スミレが満開で、
ところどころに、ショウジョウバカマやトキワイカリソウが風に揺れ、
水路を流れる水の音に、カエルの可愛い鳴き声が重なって、
静かだけど、にぎやか(笑)
にぎやかだけど、落ち着く、
出来る限り、ゆっくりと歩きたい場所。
決して失くしたくない場所、
失くしてはいけない場所、あらためて、その思いをかみしめました。
遠路はるばるお越しくださった、
ラムサール条約事務局のお二方には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
また、この視察をセッティングくださった環境省の皆さま、
同行されていた皆さまも、本当にありがとうございました。
コメント
有意義な意見交換が出来たようですね。
お天気も味方してくれて良かった。
ありがとうございます。
事務局長とのやりとりでは、
正直、現場ではとまどうことの方が多かったのですが、
思い返してみると、それはつまり、
中池見の特異性を、私たち自身が、
はっきり認識していなかったということのように感じています。
そういう意味で、とても大切な機会だったと思います。
そして、今、中池見を守るために必要なことを、
しっかりとメッセージとして伝えてくださった事が、本当にありがたかったです。