大変遅くなりましたが、6月4日に開催した中池見湿地アメリカザリガニ防除セミナーのご報告です。
この日の午前は、ザリマジチームの活動を講師の皆さんとともに行いながら、現場でいろいろとアドバイスをいただきました。
宮城県からはるばるお越しくださったシナイモツゴ郷の会理事長の高橋清孝さん。
シナイモツゴ郷の会で開発された連続捕獲装置と稚ザリをとるための人口水草を持参くださり、その原理や使い方を丁寧に説明してくださいました。
ザリマジチームで使っているものは、この連続捕獲装置を参考に自作したものなので、参加くださっているサポーターさんたちも興味深々。いろいろ改良しないといけないと話していました。
この日獲れたザリガニは31ミリ~97ミリのもの80匹。平均が72.9ミリで大型のものがまだまだ多かったようです。
ザリマジチームのメンバーと計測の仕方についてアドバイスする一方、ザリガニと一緒に獲れてきたフナやドンコに大喜びのチビッ子の様子を楽しそうに写真に撮られる高橋さん。
冬の間も毎月欠かさず防除作業をした休耕田に久しぶりに出てきてくれたトチカガミとデンジソウをみんなで観察。獲り続ければこのように復活することをみんなで共有して、午前中は終わりました。
午後は、ビジターセンターで、『中池見湿地トチカガミプロジェクト アメリカザリガニ防除セミナー~在来種を取り戻せ!~』を開催。
最初に、シナイモツゴ郷の会の高橋さんからは、地域のため池に残された豊かな生態系、次から次へと侵入してくる様々な外来生物、それに一つ一つ対処していく防除活動の歴史を伺いました。
そして、獲ったザリガニの有効活用も含め、地域ぐるみの防除活動にしていく防除モデルを示していただきました。
また、国会で可決されいよいよ来年には施行となった改正外来生物法についても解説いただきました。これまでの特定外来生物とは違い、個人で飼育することはOKだがそれを放流することについては厳しく対処されるとのこと。詳細はこれから詰めていくとのことでした。
続いて、福井県自然保護センターの五十川祥代さんから、県内の外来生物の状況と陣ヶ岡丘陵地でのアメリカザリガニ防除の取り組みについてお話しいただきました。
県内では現在18種の特定外来生物が確認されていること、またアメリカザリガニについては、県内全域に広く確認されているとのこと。
豊かな自然が残る里山として福井県重要里地里山に選定されている陣ケ岡丘陵地についても、2016年にアメリカザリガニが確認されて以来、地域の方々や研究者の方などで熱心な防除活動が続けられていること。しかし成果が見えにくく、毎週のかご罠上げなどにかかるマンパワーやモチベーションの維持に課題があることなど、我々と同様の課題に悩まれていることがわかりました。
前半最後は、越前市エコビレッジ交流センターの野村みゆきさんから、「頭痛の種! 外来生物が忍び寄る里!!」というテーマで、越前市西部地区(坂口・白山地区)で長年取り組んでおられる保全活動の思わぬ落とし穴についてお話くださいました。
アベサンショウウオやハッチョウトンボなどの希少な里山の生き物を育む生物多様性豊かな越前市西部地区。その豊かな自然のシンボル、コウノトリが舞い降りる田んぼづくりなど、地域ぐるみの理想的な活動を行ってきたところに、アメリカザリガニが侵入。アメリカザリガニの防除も地域ぐるみで行ってきたが、知らず知らずのうちに駆除活動の目的が変化し、元々の生物多様性豊かな里山の保全が地域の方々の中から忘れられそうになっていることに気付いて活動を見直すことになったこと。さらに、別のため池でもザリガニの侵入を確認し、今後どのように駆除していくかにも頭を悩ませていることなどが語られました。
後半は、中池見ねっとの藤野より、中池見ねっとで取り組んできたザリガニ防除活動のこれまでの経緯と現在取り組んでいるトチカガミプロジェクトの概要についてご紹介した後、総合討論は皆さんからの質問にお応えしながらの意見交換という形で進みました。
防除方法、防除による他の生き物への影響について、モチベーションの維持の仕方、スタッフの高齢化など、どれも、日頃から悩んでいることばかりで、皆さん同じ課題を持っておられると改めて思いました。
外来種問題は、終わりのない、どこまでも続く長い長い道のりであることを覚悟した上で、だからこそ、戦略を共有しぶれずに無理のない活動をしっかりと続け、つないでいく、ということに尽きる、という結論を、やっぱりそうだよねと受け止め、何だかせいせいした思いになりました(笑)
同時に、年に一度くらいはこういう場を持ち、新しい方法や知見を学んだり、ぼやいたり(笑)できたらいいなとも思いました。
ご講演くださった皆様、ザリマジチーム、そしてセミナーにご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。お互いこれからも、めげずに頑張って獲りましょう!!(笑)
このセミナーは2022年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成、
および 福井県民生活協同組合市民活動助成を受けて開催されました。
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